★注意書き
※木赤両想いですが二人とも浮気します
※後味悪めです
すこしでも苦手に思われる方は、大変申し訳ありませんが閲覧をご遠慮ください














昼休みの教室まで迎えに行くと、赤葦は自分の席でクラスの女の子数人の勉強を見てやっているところだった。

「おーい赤葦、」

俺が名前を呼べばこっちを振り返ったきれいな顔はかすかにほころび、そしてそれを囲んでいた女の子たちは反対にすこしがっかりしたような顔をする。

俺は気づかないふりをして、早くメシ行こうぜと手にした弁当箱を振った。ごめんとかそれじゃとか、そんなかたちに唇を短く動かした赤葦は鞄から弁当の包みを取り出してひとりこっちにやってくる。

女の子たちの視線はどこか恨めしげで、俺はそれを横目にピシャリと二年六組のドアを閉めた。

「今日はどこで食べましょうか」
そんなやりとりを知らない赤葦がたずねてくるから
「音楽倉庫にしようぜ」
と答えれば、その喉は期待でわずかに上下するのが見えた。学校でそういうことをするとき、それは俺たちがよく使う場所だった。


「ーーっ、ぼくと、さん、」
旧校舎の古びた床の、大きな打楽器のあいだに押し倒すと、赤葦は今さら非難するような声で俺を呼んだ。昼も食べずにがっつくのは、そういえば久々かもしれない。(でも赤葦が女の子と喋ってたのがむかついたんだからしかたがない)

わき腹の上に馬乗りになって身を屈め、その首筋にしゃぶりつく。赤葦はびくっと震えて一瞬抵抗するような素振りを見せたが、俺が本気でやろうとしてるのにムダだってわかったんだろう、すぐにおとなしくなって自分から俺のベルトに手をかけた。昼は時間がないから、やるときはたいてい赤葦が舐めて勃たせてくれる。

いつも通り素直に取り出すさまにすこし機嫌がよくなって、俺は床に引き倒された赤葦の口にふにゃふにゃのそれを突っ込んだ。赤葦はうっとえずいたけれど、それからは教えた通り俺のいいところにゆっくりと舌を這わせてくれる。

赤葦の整った顔が俺のをくわえているのはいつ見てもゾクゾクした。俺の単純な性欲はすぐそこにあつまって大きさを増し、赤葦はすこし苦しそうに眉根を寄せる。

気まぐれに喉を突けばその表情はさらに切なげになり、喉奥からはぅん、とくぐもった声が漏れる。

じょじょに赤く濡れ始めた目尻はいやらしく、仮にも学び舎の隅で赤葦がこんなふうに口の周りをべたべたにしているのだと思ったらどうにも昂ぶった。

んっんっと懸命にしゃぶる口から引き抜いて、赤葦の身体をひっくり返す。俺は触っていなかったが、赤葦のズボンはわずかにずり落ちた。健気に自分で解していたらしい。右手の指はうっすらと透明の糸を引き、ズボンの前は勃ち上がった赤葦のそれに引っかかって止まっていた。

いいこいいこ、頭を撫でてひと思いに入れてやる。赤葦はああっと感極まったような声を上げるので慌ててその口を塞いだ。

音楽倉庫だから防音はきっちりしているし、こんなところを通りかかるような人がいないのは知っているけどさすがに突っ込んでるところで人に見つかるのは困る。

赤葦はいってなくてもいいけどせめて俺はいった後に見つかりたい。そんな身勝手なこと考えながら気持ちのいい穴にへこへこと出し入れする。

口を塞がれた赤葦は奥を穿たれるたび行き場のなくなった熱を堪えるようにびくびくと身体を震わせた。あんまり慣らしていないからすこしきつかったけど、赤葦はやらしいから腰を突き出して善がってる。そんな姿に煽られて俺もますます興奮する。

後ろから突いているのも気持ちよかったが、乱れている顔が見たくてつながったまま赤葦の身体を反転させた。赤葦は生理的な涙を目の端に湛えてゆるく勃たせていた。空いた手で擦ってやれば太腿がびくりと持ち上がって空を切る。

赤葦は太腿もいやらしい。女の子の余分な肉と引き締まったそれはまったくちがって、ストイックに鍛えられたその筋肉が俺に突っ込まれてなにもできず震えているのを見ると、おなじ男としてこいつを征服してやった満足感で俺はいつもたまらなくなるのだ。

(……そうだ、赤葦は俺のだ)
腰を打ちつけながら、そう思った。

背が高くてきれいな顔で、やさしくて空気の読める赤葦はたしかにすごくもてる。(さっきみたいに女の子と一緒にいるのを見るのもしょっちゅうだ)

でも、きれいな赤葦は俺だけのものだ。だって赤葦はベタベタに俺に惚れているんだ。俺がちゅーすると顔は無表情のままだけど首が真っ赤になるし、俺がやりたいって言ったらこんなふうにどこでもやらしてくれる。

反対に俺がダメって言ったことは絶対にやらない。俺がいいってゆるすまでひとりでしたらダメだかんなって冗談で前に言ったら本当にそのとおりにして、俺がキスしただけで射精してしまったことさえあった。

(……ああ、そうだ)
両手で脚を抱え、赤葦の腰を持ち上げる。
「くち、自分で抑えてろよ」
「?……ああ、はい、」

言われるままその手を口元に運んだのを見て俺は奥まで押し込んだ。赤葦は指の隙間からふぅって短い吐息を漏らして苦しそうに首を振る。頭上の時計をちらりと見ると昼休みはあと十五分ほどだった。

「赤葦、つぎの時間、なに?」
「んっあ、あ、す、すうがくっ、」
「あっそ、おまえ得意だったよな。じゃあ、サボっても問題ねーよな」
「っ、……!」

揺さぶりながらたずねれば赤葦は潤んだ目で俺に抗議したが、こんないやらしい顔した男を教室になんて帰せるわけがなかった。

ガツガツと突きこみ自分の好きなように気持ちよさを貪ってそれから、女とは寝るなよとその耳にささやく。赤葦はぼうっとした顔で俺にやられていたが、わかったな? とくりかえせばこくこくと首を振った。

ガチガチに硬くなった赤葦のそれは腹の上でふるふると震えている。こいつだって立派な男なのに、俺の一言できっとこれは女も知らないまま終わるのだ。

俺はひどく満足して赤葦から引き抜いた。今までさんざ抑えさせた赤葦の口を開け、乱暴に突っ込んでそこに飲ませる。赤葦は突然のことに手足をばたつかせて、けれどこぼせば俺が不機嫌になるとわかっているので必死にそれを嚥下した。ごく、ごく、と赤葦の喉仏が上下するさまがいやらしい。

最後まで赤葦に吸わせてぶるりと腰を震わせ、そうしてゆっくりと抜いた。

は、は、と短い呼吸を繰り返した赤葦は口のまわりの汚れをぺろりと拭って、俺がそれ以上をしないのがわかると自ら扱き始める。埃に汚れた床の上で太腿を擦り合わせ、同性にさんざ嬲られ放り出された性器を自分で慰めて赤葦はあっけなく吐精した。達する瞬間痙攣するまぶたがうつくしかった。

じょうずにできた赤葦の髪を梳いてやると、ややあって呼吸をもどした赤葦は弁当食べましょうかと疲れた声で言った。そういえば腹が減っていた。

+++

「木兎さあ、なんか最近、ご機嫌じゃない?」
体育倉庫に連れ込むと、同じクラスのハルナはそう言って俺の首に手をかけた。

「そうだったっけ?」
女らしいやわらかい身体をマットの上に倒しながら聞き返す。あん、と媚びた声を上げたハルナはそうだよぉと甘ったるく語尾を伸ばした。

「なに? アカアシくんとでも上手くいってるとか?」
「べつに、いつでも上手くいってるって」

ああ、でもこの前約束させてからはちょっと気分がいいかもなあ。内心思いながら豊満な胸に顔を埋める。ご自慢のDカップはベストの上からでもたゆんとやわらかくてたまらなく気持ちよかった。おっぱいがかわいくて顔もクラスで5番目くらいにかわいいからハルナとはときどき寝ていて、赤葦とのことも普通に話してる。

赤葦には女と寝るななんて言っておいて自分はどうなんだって話かもしれないけど、赤葦だってこのことは承知してるんだからべつにいいと思う。今日だってちょっとやってくるから待っててと言って教室に待たせてあるのだ。赤葦は俺に惚れているし甘いから、何も文句は言わずにわかりましたとうなずいていた。

まあそれよりも今はと目の前の女に向き直る。押し倒すとマットに流れる長い茶髪もふたつのまあるいふくらみも、それから勝手に濡れてくれるゆるゆるの穴も、赤葦にはどれもついていないものだ。

赤葦のことはだれより好きだし特別だけど、たまにはこういうやわらかい肉を食べたいときもある。

ふにふにした胸を揉んでいたら勃ってきたから、身を離してなんの役にも立たない薄い布をぺろりとへそまで持ち上げれば、女は薄く唇を持ち上げて、きて、と言った。


体育倉庫を出ると、初夏の夕空にはちょうどにわか雨が降り出したところだった。ヤバイ傘持ってないと慌てるハルナとはそこで別れ、俺は教室まで赤葦を迎えにいく。

思ったよりも待たせてしまったからさすがにすこしだけわるい気分になって途中で赤葦の好きなカフェラテを買った。

案外食べ物で釣られるかわいいやつだからこれでゆるしてくれるだろう、なんて、そんなことを考えて呑気に廊下を歩いていたのだ。

そうして、教室でその二人を見た。

赤葦と、それからもうひとりは知らない男だったが、二人の話す態度を見るにどうやら赤葦の同級らしかった。男は俺に気づくと赤葦になにごとかを言って鞄を持ち上げ、いそいそと俺の横を通り過ぎてゆく。

ボタンをだらしなく胸の辺りまで開けた男からはすれ違いざま知った匂いがして、本能的に背筋がぞくりとした。

雨の降り出した音だけが響く薄暗い教室で、赤葦は
「遅かったですね」
と静かに言う。

どこか掠れた、低い声だった。その襟はいつもならきっちり留められているはずなのに、今はさっきの男と同じように第二、第三あたりまで外されている。

ガタン、と近くで音がした。ぼんやりと見やるとそれは、手にしていたカフェラテを床に落としてしまった音だ。ああ、そうだ、俺は赤葦にこれをやろうと思っていたんだ、そう思って拾い上げる指はなぜか震えている。

「木兎さん?」

困惑したような声で赤葦は俺を呼んだ。はっと顔を上げる。いや、なんでもない、なんでもないから、そう言って二、三歩暗がりに近づき、笑おうとした。できなかった。

だって赤葦は、いつも俺と寝た後の顔をしてそこに立っていたんだ。

ドゴオ、と重たい音が唐突に胸を撃ち抜いた。遠くではいつの間にか激しさを増した通り雨が荒れた風を呼び、一閃の雷鳴を落としているところだった。

「……赤葦、あいつとやったの」

あるいは雷の音に、声が掻き消されてくれたらいいと思った。雷鳴を眺めていた赤葦はしかし、ゆっくりとこちらを振り返る。

「はい」

返事は簡潔だった。簡潔なだけ、絶望だった。

「どうして、赤葦、やらせたの」
「俺はやられてません」
「じゃあ、あいつに……いれたの」
「はい」
「……なんで」
「木兎さんが、俺を抱くときどんなふうに気持ちいいのか興味があったし、それに、」

木兎さん、女と寝るなって言ったから、男ならいいのかなと思って。

ガツンて膝に走った痛みが、俺がくず折れたせいだって気づくまでにはしばらく時間がかかった。

「……木兎さん、木兎さん?」

心配そうな赤葦の声はなぜだかひどく遠く聞こえる。すみません、だめだったんですね、これからは他の誰ともしませんから。そんなふうに言うのもだ。

赤葦は俺のことが大好きだし、これからは本当に、俺以外の誰とも寝ないのだろう。誰よりもよくわかっていた。うん、うん、そうだな赤葦。答える声は笑っちゃうくらいに震えている。

胸の内には、どこか取り返しのつかない穴が、ぽっかりと空いていた。







(2014.0715)