及川♀×岩泉♀です。
申し訳ありませんが苦手な方は回避をお願いします。



「あの、ハジメ先輩ちょっといいですか」
バレー部の練習の終わり、今年入ったばかりの後輩がそう言って岩ちゃんを連れ出したときから、まあ、そういうことだろうなと思っていた。

練習中その子がいつもキラキラした目で俺のとなりを見つめているのは知っていたし、ボーイッシュできりっと凛々しい岩ちゃんは昔から異性より同性によくもてる。(おかげで小学校では岩ちゃんの仲良しの女子の悪いウワサをたくさん吹き込まなきゃならなかったし、中学校では岩ちゃんに寄ってくる後輩に取り巻きの男を片端紹介してそっちになびかせないといけなかった)苦労してようやく勝ち取った俺の大切な恋人だ。

ちらりとこちらを振り返り、声には出さずごめんと言って体育館裏に行った恋人は今ごろきっと、なるべく相手を傷つけない方法でかわいい後輩を振っている。学校では背が高くやさしくて頼りになる、女の子の憧れの岩泉先輩である。

部室棟の前で制服のシャツをゆるく扇ぎながらその帰りを待っていれば、ややあって岩ちゃんは俺のところにもどってきた。
「ちゃんとことわった?」
「うん、付き合ってるやついるからって」
「ん。いいこだね」

言いながらキスしようとすればしかしぷいっと避けられた。女子高生のかるいキスやハグなんて周りが見たってなんにも気にしないのに岩ちゃんはそうゆうとこバカ真面目だ。あるとき理由を聞いたら「付き合っているのが周りにバレたら及川が困るから」だと言っていた。やっぱりバカ真面目だ。俺は誰にバレたところでかまわないし、なんならいっそ周りに知らせて今日みたいな告白もひねり潰してやりたいくらいなのに。
ちぇっと小さく舌打ちしながら夕方を並んで歩き出すと、昇降口のあたりでふと声をかけられた。振り返れば同じクラスのサッカー部が数人だ。部活のあともバッチリ盛ってる俺のことは二、三からかって、化粧っ気のない岩ちゃんにはオマケ程度じゃあなと言って集団は通りすぎてゆく。

二人になると、岩ちゃんは無言のまま俺の手をそっと握った。自分だけ男子に話しかけられた俺をどこか嫉妬しているようにも、あるいは二、三言のあいだでも俺を誰かにとられたのが悔しいというようにもとれる指さきだった。(このひとのこういうかわいいところに気づかず俺にばかり声をかける男子は本当にバカだとおもう)
小さく笑って、つないだ手を引き寄せる。

「ねえ、今日ウチ寄っていきなよ」
今日みたいに他の女の子に告られた日、律儀な岩ちゃんがなんとなく俺に引け目を感じているのはわかっていて誘った。生真面目な岩ちゃんは眉根をわずかに寄せむつかしい顔して、けれどやっぱりうなずいてくれる。かわいいかわいい、俺の岩ちゃん。
かわいい岩ちゃんには途中のマツキヨで千円札わたしてローションを買わせて、真っ赤な顔して太腿もじつかせるさまをにやにや眺めながらわざとゆっくり家路を行った。教科書の詰まってるエナメルの鞄に不健全なボトルを入れてたぷたぷ言わせながら岩ちゃんが歩いてるんだって思ったらそれだけでむらっとしたし、レジに男の人しかいなくて泣きそうになってるようすはどうしようもなく可愛かった。

親が遅い日だから、今日はめいっぱい可愛がってあげよう。そう思いながら家の鍵を開けて岩ちゃんを上げる。俺がてきとうにローファーを脱ぐ横で、岩ちゃんはスカートを気にしながらきちんとしゃがんでそろえている。
外でだけぶってる俺とちがって、こういうところでも女の子らしい仕草をするのは昔から岩ちゃんのほうだ。たぶん、かっこいいかっこいいってさえずる後輩の女の子も知らない岩ちゃんのひみつのひとつ。
洗面所で手を洗い、お茶持ってくるから待っててといつものように岩ちゃんを部屋に通した。冷たいお茶とそれからおやつのショートケーキをお皿にのせて自室のドアを開けると、岩ちゃんは手にしていた携帯から顔を上げる。メールを送ってたみたいだ。

「ね、帰り、遅くなるってちゃんとおばさんに言った?」
「ん。今送ったとこ」
「あはっ、や〜らし! ……岩ちゃん、遅くなるの期待してたんだ?」
「! ち、ちがっ、そ、そんなんじゃ、」

ない、まで言えずに嘘をつけないそんなところも大好きだ。苺の大きいほうのお皿を岩ちゃんの前のテーブルに置いてあげる。岩ちゃんは黙ったまま苺みたいな顔しておくちに運ぶからかわいかった。

甘ったるいクリームをぺろりとたいらげてそのあとは別腹に岩ちゃんを食べる。ベッドの上に座ってキスすると岩ちゃんはさっきから興奮していたのか待ちきれないようすで俺のベストをひっぱった。
「もう、岩ちゃん、伸びちゃうよ」
くすくすと笑いながら脱いであげる。そうしてさわっていいよと許してやれば、おずおずとシャツ越し撫でてくる手のひらがいとおしい。戸惑いがちな指先にわき腹のあたりをなぞられながら俺は岩ちゃんのベストに手をかける。ぺろりとめくりあげて引き抜けば、シャツ一枚になった身体は胸の部分だけがたっぷりとふくらんで主張している。

先ごろ十七の誕生日を迎えた岩ちゃんの胸は高校に入ってからというもの目に見えて大きくなって、夏服に衣替えたこのごろは半そでの隙間からちらちらとそのふくらみが透けどこか健全ないやらしさがあった。
しゅるりとリボンを外してボタンをひとつ開けると、期待に満ちたため息がほうっとその口からもれる。おもしろいからそれ以上は開けずに、服の上から触ってあげる。

「っぁ、あっ、うう、」

なんで脱がさないんだよ、まるでそんな抗議が聞こえてきそうな目つきだった。岩ちゃんは赤い目をうるませて恨めしそうに俺の腰を撫ぜる。あっ、と思わず声がもれた。腰骨を伝ってぴりりと心地よい快感が身体中に走る。岩ちゃんは得意げに笑うから、俺はむっとしてがしりと岩ちゃんの胸をつかんだ。ブラジャー越しですこし硬い感触をぐにぐにと揉んでやると、岩ちゃんはすぐにはあはあ喘ぐことしかできなくなる。
ちゅっちゅと鎖骨のあたりに落としながら揉みしだいていれば、やっぱり岩ちゃんは今日もくにゃくにゃになってしまった。座ってるのもつらそうな身体はシーツの上にそっと横たえて、今度こそ制服のボタンに手をかける。脱がされるあいだ気まずげにまつげを伏せる表情はぞっとするほど色っぽかった。

あの凛々しくて男勝りな岩泉先輩が制服を脱がすとこんなにやらしいの俺だけが知ってる。そう思うとお腹の下あたりがきゅんとする。岩ちゃん触ってとその手をとった。とろけて力のない指はぴくりと震え、それからのろのろと俺のお尻を撫でる。布越しの感触がもどかしくて俺はもぞもぞとプリーツスカートを脱いだ。後で皴になるのもどうでもよくぽいと放ってかわりに岩ちゃんの鞄からボトルを取り出し、あらわになった岩ちゃんの豊満な胸に沈み込む。女になりかけた身体からはむわっと甘い花のような匂いがして頭がくらくらした。

そっけないグレーのブラはわずかにずらして、ぎゅっとつかんでもまだ指からあまる岩ちゃんの胸にとろとろとたらして可愛がる。岩ちゃんは冷たさにぴくぴくと身を震わせてはあはあと喘いだ。中学のころは俺のほうが胸だって大きかったのに、いまじゃ岩ちゃんの方がもっと女らしい身体だ。ぬるぬるとすべる胸を、同性の嫉妬と単純な気持ちよさから好きなようにいじると岩ちゃんはもうダメ、もうダメと繰り返して身をよじった。

「は、はっ、おいかわ、ぁ、」
「ん。岩ちゃんもういきたい?」
「んん、……及川、も、」

とろんとした目でいいながら、岩ちゃんの指は思い出したように俺のお尻をぐいとつかむ。強く握られてひゃんっと高い声を上げてしまった。撫でられて揉まれて、ときどきぺちりとイタズラにたたかれて、脚のあいだがむずむずしてきてしまう。

「……及川、濡れてる」

興奮に上ずった声で岩ちゃんが言うから見下ろすと、水色のショーツにははしたない青い染みが出来ていて恥ずかしかった。黒とかもっと目立たないのを履いてくればよかったと思いながら悔しまぎれ岩ちゃんのスカートめくり上げたらそっちだってまあるい染みをつくっていた。
部活のある日は岩ちゃん動きやすいボクサーみたいなのはいてるからまるで男の子みたいで、でも下着の上からでもくっきりと女の子の興奮がわかってどきどきする。
おでことおでこくっつけあって、恥ずかしいねって二人で笑いながら触りあう。バレーをやってる岩ちゃんの指は硬くて、でも女の子らしい繊細な手つきで俺を愛撫してくれる。ショーツの上からつんつんとつついて、ぎゅーっと押して、そうして太腿をうっとりと撫でてくれる。俺はもう我慢できずに喘ぎながら岩ちゃんのボクサーをずらした。
びくついた太腿をひらかせてそのあいだにぺたんと座って、おっぱいを舐めながらそこに指を入れる。岩ちゃんの裸身はびくんと大きく飛び跳ねた。まだローション使ってないのに、すごい濡れてたから一本入れても全然痛くないみたいだった。

男に抱かれたことさえないのにこんなにぐずぐずに溶けてるんだからやらしいと思う。俺はいじわるな気持ちになって、ふうふうと息を落ち着ける岩ちゃんの耳元にそっとささやいた。
「ね、岩ちゃん。こんなふうになるの、ホントはいけないことなんだよ」
「っぁう、んんっ、あ、あっ……」
「他の人には、絶対に見せちゃダメなんだからね」
こんなとこ見られたらきっと、「岩泉先輩」に憧れてる女の子にも、幻滅されちゃうんだから。だからダメだよ。いいね? わかったね? 岩ちゃんの頭がろくに回っていないのをいいことに、突き入れた指を数本ばらばらと動かしながら俺は刷り込むように言葉を押し込んだ。

思考の回らない岩ちゃんはがくがくと首を縦に動かしうなずいて、俺の下着にできた染みを健気に指で押し続ける。弱い部分をきゅうっとつぶされときおり指まで中に入り込んで、膝立ちでいるのもだんだんきつくなってきた。岩ちゃんの上に倒れこんで腰をぎゅうぎゅう押し付けて、気持ちのいい部分をふたりで擦りつけ合う。
あん、あん、と切羽詰った女の声だけが部屋には響き、やがてそれは大きくなって、そうして一瞬を境に、ゆっくりとした満足と倦怠の吐息に変わる。荒い呼吸を繰り返すたび、いつのまにか自分の中に入り込んでいた岩ちゃんの人差し指を食い締める感触が気持ちよかった。

ぴったりと重なったまま何度かキスをして、お互いの身体から指を引き抜いてべとべとになったそれをぼんやり舐めていると、目をそらした岩ちゃんは小さな声で俺を呼ぶ。

「……なあ、及川」
「ん、……うん? なあに?」
「及川も、俺のこと、その、厭らしいやつだって、本当は呆れてるのか」
「え?」
「だって、ほら、さっき……」
「ああ、さっきの。そんなわけないよ、だって俺は岩ちゃんのやらしいとこも大好きだもん。ねえ、どうしてそんなこと聞くの」
「……だって、及川にゲンメツされるのが、俺いちばん嫌だから」

ずきゅん、ってかんじだった。俺は岩ちゃんを誰かに盗られるのがいやで言ったのに、岩ちゃんは自分が俺に呆れられる心配をしてる。いとおしさにぎゅうっと胸が詰まる。もっかいしようと言っておでこにキスをすると、岩ちゃんはぷいっとそっぽを向いて、それから、腕に引っかかったままのシャツをぱさりと払い落とした。




(2014.0418)