おもしろいくらい、しろい。

というのがたぶん、初めてこいつを抱いたときの感想だった。部室の青いベンチの上に押し倒して赤葦のベルトを奪いながらそんなことを考える。ぺらりとワイシャツをめくった下の素肌はあの日と変わらない白さで俺を誘っている。思わずごくりとつばを飲むと赤葦は天井を仰いで諦めたようなため息をついたが、実際先に誘ってきたのはこいつの方だった。

ほとんどの部員がジャージのまま、めんどうくさいから制服だけを持って帰る中で、夏休みのこの時期でも赤葦はたいていひとりきちんと制服に着替える。真面目だよなーと小突いてみんなはその肩を小突いて先に帰るけれど本当は正反対だ。

真面目なように見せかけて、赤葦は内実だれより不真面目なのだ。

だって扇風機ひとつっきゃ置かれてないこのクソ暑い部室で、わざわざこいつが制服を着こむのは単純に俺を誘ってるだけなんだから。第一ボタンまできっちり留められて地肌を包み隠されると、ひどく興奮した俺がそれを脱がしたがると知っていてこの男はボタンを留めるんだから。

そんな赤葦に騙されてるみんなはだから本当にばかだ。思いながら白い脇腹にちゅうと吸いつく。ひゃんっと女の子みたいな声が上がる。赤葦がダメって言うから俺は女の子をやったことはないんだけど、こういうことするとき赤葦はAVで見るおんなのひとみたいな声を出してくれるからもえる。

ピシリと留められたボタンはお腹の方からひとつずつ外してゆく。硬い腹筋はゆるやかにあらわになって、シャツの上から尖っているのが見えた胸は期待にわずか震え、そうして頑なに着こまれた首元まですべて脱がしてやると赤葦はもう興奮しきった表情で俺を見上げてくる。多少日に焼けているけれどもともとが白いから、赤葦の頬は火照ると目に見えて赤くなっていやらしかった。真っ赤な目元にちゅっとやって、普段は隠されたままのしろいお腹をゆるゆると撫でてやる。ボクサーの前が反応するのはいつもより早かった。

赤葦が第二ボタンまで留めるのはそのまま帰っても部室に残ってもどちらでもいい気分の日。今日みたいに第一ボタンまで上げるのは、俺とやりたくてしかたがないっていう日なのだ。急かすみたいに脚を巻きつけてくるからちょっとだけ笑ってそのズボンも払い落してやった。

下着一枚になった赤葦の手足には八月の半ば、くっきりとした日焼け跡ができている。半袖を着る二の腕のラインと、太腿の真ん中よりすこし上にもうひとつ。練習着のパンツは短いから、脚の付け根すれすれのあたりにその赤い線はくるりと走っている。白い素肌と焼けた肌の対比はまるで真面目に見えていやらしい赤葦のギャップみたいで背筋がぞくっとする。

そろそろ我慢ならなくなってきて胸に噛みつきながら赤葦のボクサーを揉みこむと、赤葦は首をよじって煽るように俺の腰を撫でた。やらしい手つきだった。しっかり興奮したジャージを赤葦の太腿に押し付けて赤葦のしろい肌を火照らせてゆく。赤葦はんっ、んっ、といかにもつつしみ深そうに声を堪えるくせに、そのわりやわやわと俺のケツを揉んでいた。赤葦にやらしたことはないけれど、これやられるとけっこう気持ちいい。つられるように下着の中に手をつっこんで赤葦の尻を揉んでやった。あっと驚いたような声はどこか艶がかかって期待に上ずっている。

「なあ、今日はこうしてもらうのいつから期待してたの」
「っあ、あ、っ……き、期待、なんか、」
「うそつけよ。休憩んとき、今日、やったら触ってきてただろ」

監督が呼んでますよとかそんなの口で伝えればいいだけなのにわざわざ腕をつかんだり、なにバカなこと言ってんですかとか言いながら軽く小突いたり。はたから見ればただ仲がいいだけの先輩後輩なんだろうけど実際は中がいい後輩とそれを知ってる先輩だ。

太腿までボクサーずり下ろして、焦らすように浅く指を突っ込んでたずねれば赤葦は顎をうめくような声で昨日の夜からだと言った。夜たまたま部活の用事で俺が電話をかけたからそのときからそういう気分だったらしい。やらしい赤葦。いけませんよって口では言うくせに、白い肌を包み隠して俺に暴かれるのを待っている赤葦。ほんとうは自分がいちばんいけない赤葦。

お仕置きするみたいにほとんど慣らさないままいれたけど、そんなに痛そうな顏もしてないから後はもう好きなようにずりずりと腰を動かした。中途半端に下着が引っかかったままの脚を持ち上げて、ただ自分が善いように赤葦の中を出し入れする。

ゴムをつけなくても赤葦は赤ちゃんできないから楽だった。いつも終わったあとで怒られるけど、赤葦だってきもちそうにあんあん言ってるんだから俺ばっかりわるいわけじゃないと思う。

ぎちぎちきつく締めてくるそこを抉ってやると、赤葦はだめ、だめ、といって首を振る。(掘られて勃ててるくせに)むかつくからガツガツと突いてやる。赤葦はすこし乱暴にされるのが好きだ。乱暴しながら甘やかすようなキスをするとかんたんにいってしまう。腹のあたりにぴしゃりと飛び散ったのを感じながら突き上げてやった。いつも冷静な顔した赤葦が俺の下であっさり射精しちゃうのはいつ見ても興奮するから俺もすぐだった。
ぎりぎりのそれを引き抜いて今日は赤葦の顔にぶっかける。荒い息をくりかえしていた赤葦はびくりと震えて、それからどこかぼんやりした目で俺をにらむ。

「顔、いやだって言ってるじゃないですか」
「うん。でも今日は顔がよかったんだもん」
「……もう、」

諦めたようにつぶやいた赤葦は俺の吐き出したそれを指ですくって舐めた。タオルで拭いたっていいのに赤葦はだいたいそうしてくれる。たぶん、そういうの好きなんだとおもう。

「なあ、今日はもうやめる?」

わかっててたずねれば赤葦は眉間にちいさく皺をよせて俺の首に腕を回した。しろかった素肌は興奮にすっかり赤く染まり、二の腕のラインはさっきよりなんとなしぼやけたように見える。この男のしろいところも赤くなったところも自分しか知らないのだと思うとたまらない気分になって俺はその肩を押した。俺がそうしているように見えて赤葦の好きなように動かされているような気もしたが、突っ込んで気持ちがよければなんだってよかった。




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アカアシクワガタっていうクワガタがいて脚の付け根が赤いんです
(2014.0406)