※及川女体化+えろ+生理なので注意してください※
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「及川って、やらせてくれそうだよね」

中庭の木陰でうたた寝をしていると不意に名前を呼ばれて、及川は顔を上げる。すぐそばの渡り廊下をゆくのは隣のクラスの男子たちだった。合同の授業かなにかで喋ったことがあるような気もしたが、名前もほとんど覚えていない。茂みの裏にいる及川の姿は向こうから見えないのか、本人がそこにいるとも知らずに彼らの会話はつづいてゆく。男子バレー部は全員やってるとか、援交だとか百人斬りだとか、よくそんなくだらない話で盛り上がれる童貞たちだ。あくびをしながらそう思う。おまえじゃ無理だよとかまあ顔はかわいいよねとか、まったくばかばかしかった。(だいたい俺は、岩ちゃんとしか、)

「やめろよ」

寝ないのにと、思った瞬間本人の声が低く響いてびくっとする。草むらがかすか揺れてここにいるのがばれないだろうかと一瞬焦ったが、それよりも向こうの空気は張りつめていて及川に気付くどころではなかったようだ。息をひそめて、成り行きを見守ることにする。

「な、なんだよ岩泉、ちょっと冗談で言ってただけじゃんか、」
「はあ? ……ふざけんなよ、よく知りもしねえくせに」

岩泉の眉間に、彫刻のように皺の寄るのがここからでもわかる。どこから聞いていたのかわからないが、体育館棟のほうからやってきた岩泉は無神経な男子たちの会話に相当きれているようだった。だってあの顔は以前、及川がドラクエのセーブデータを間違えて消してしまったときと同じ顔だ。「これからデスピサロだったんだけど?」と岩泉が振り返ったときのあの恐怖を及川は忘れない。

あわや一触即発になるかと思ったが、しかし岩泉のつぎの一言でその場の空気は凍りついた。

「あいつは俺にしかやらせねーよ」

そう言ってむすっとした顔のまま、岩泉は校舎に向かってさっさと歩いていく。男子たちはぽかんと口を開けて突っ立っていたが、及川だけはその背中をどこまでも見つめながらひとりふるえていた。岩泉は本当に、なんていいのだろう、これだから好きだ。他の男を受け入れるなんて考えただけでも吐き気がする。きっと及川がそう思っていることさえ、岩泉はわかっているにちがいない。ちくしょうと、童貞のひとりが最後につぶやいた言葉はいっそ小気味よかった。

嬉しくなったからその日の部活が始まる前「今日うちに来てよ」と廊下で耳打ちした。岩泉はすこし考え込むような顔をしたが、それからわかったとうなずいて男子更衣室に入ってゆく。おとなりの女子更衣室のドアを開け、スカートのファスナーを下げたあとでそういえば昨日から生理だったのを思い出した。すこしだけ残念な気持ちになったが部活の後輩に呼ばれて、及川はロッカーを閉めた。

***

「今日、おくちだけね」

ふとんの上に座った及川がそう告げると岩泉はため息をついて、「そうじゃないかと思った」と言った。なるほど誘ったとき考え込んでいたのはこれかと納得して、及川はうれしくなる。

「岩ちゃん覚えてるの? やだなも〜俺ってば愛されてるんだから」
「アホ。高校生で出来たらどうすんだってはなし」

だいたい十八になるまでする予定じゃなかったのに。もう何度目かわからない後悔を岩泉は今日もぼやく。及川はふふんと笑って、岩泉のあぐらの上に乗った。がっしりした首に抱きついてちらと見下ろせば制服の上からでももうゆるく反応しているのがわかる。

初めてこんなふうに誘惑したのは中三の夏だ。岩泉とはもうずっと付き合っていたからいつかするのはわかっていたし、それならべつに今でもいいかと思ってコンドームを買った。いまどきコンビニでも売っているのだからかんたんだった。岩泉のサイズはわからなかったがてきとうに買ってみたらだいたい合っていたからやっぱり自分の岩ちゃんへの愛は本物なのだと当時はうれしかった。その次からお前は買ったらダメだと言っていつも岩泉が用意するようになったけれど、ときどきは及川も選んであげたいのにと思う。

大きな掌に抱かれ腰のラインをなぞられて、ううん、とくぐもった声がもれた。ちゅ、ちゅ、と角度を変えてくちづけると脚のあいだがむずむずして、たまらない気分になる。思わずベルトのバックルに触れると、それを遮るように岩泉は及川のブラウスに手をのばしてきた。リボンを解かれて片手でボタンを外されると、たどたどしかった童貞のころを思い出してすこし悔しい気持ちになるけれど、あいかわらずどこか遠慮がちなやさしさで素肌に触れられればそんなことはもうどうでもよくなった。普段はバシバシと容赦なく及川を叱る岩泉の手がこのときばかりはやさしくなるのが、及川はいっとう好きだった。

鎖骨を撫でられうっとりしていると、その指はさらに下に降りて、三番目のボタンに当たる。ふと目線を下して、それから及川は慌ててブラウスの前を握り締めた。

「あ、やっぱだめ、今日はだめ、」
「え、上もだめなのか?」
「そうじゃないけど……今日、岩ちゃんの好きな下着きてないから」

そう言うと岩泉はすこし呆れたような、けれどどこか嬉しそうな顔をして及川のボタンを外してしまった。及川はやだ、やだ、と言ったのに、ひどいと思う。黒地に赤いリボンがついたブラのホックをはずしながら、

「おまえの下着なんてそのへんに転がってるのいつも見てるだろ」

と岩泉は言ったが、そういうことじゃない。及川がぶすっとしていると、

「なんだよ、……べつに、これもいいって」

と岩泉は言ったが、そういうのはひどい。嬉しくなってもっといろいろしてあげたくなるから、ひどいと思う。及川は今度こそベルトを外して、ファスナーをおろす。すこし興奮しているのを撫ぜればそれはぴくりと震えて愛おしくなった。ボクサーの上から鼻をこすりつけて、唇を押し当てる。岩泉の匂いがして思わずはあと吐息が漏れた。触ってもいないのにぐずぐずに濡れているのが自分でわかる。いれられたらよかったのに、まったく月経なんてクソくらえだ。とりだしてぺろりと舐めながら、及川は四つん這いになった太ももをぎゅっと擦り合わせた。

初潮のきたとき、ああ岩ちゃんとは完全にちがう生き物になってしまったのだと思って悲しかった。それまでは一緒だった体育も中学に上がって、ちょうど男女別々になったころだった。

脚のあいだから血を流しながらその日は泣いたけれど、けれどそれから初めて岩泉とセックスした日も、やはりおなじように及川は泣いた。岩泉とぴったりひとつになると、なんだかまるでこのときのために自分の身体が造られていたようなそんな気さえして途方もなく嬉しかった。腹の中に岩泉の一部が埋まっているなんて、なんて素晴らしいんだろう、信じてなんかいないが及川は神様に感謝した。だから岩泉とセックスするのは好きだ。

「ん、んん……」

頬張ってもまだ口からあふれそうな質量に呼吸が苦しくなる。それでも懸命にくわえて舐ると、頭の上で岩泉があっ、と短く漏らして嬉しかった。頬の内側を押し付け裏側を舐めて、それからずるずるすするとすこしずつ固くなっていくのがわかる。岩泉の内股に手を置いてしゃぶっているとその腰がひくひくと震え始めて、岩泉は及川の顎を持ち上げ「離れて、」と余裕のない顏で言った。

「え、でも俺、飲めるよ?」
「(〜〜っそういうこと言うんじゃねえよ、)いいから、」

そういって身を離し、それから岩泉は及川の身体を起こした。抱きかかえるように膝の上に乗せてキスをする。そうして及川の乳房を片手でもみながら、もう片方の手は及川の手をとって脈打つそれに誘導する。ん、ん、と繰り返されるキスに答えながら擦ってやった。数度上下させただけで、震える熱はあっというまに爆発した。触れ合った肌から、握った手のひらから、そうしてつながった唇から岩泉の快楽が伝わって、頭がくらくらする。いれられているわけじゃないのになんだかひとつになっているような気がしてひどく幸せだった。

及川の制服のスカートに飛び散った精液を見下ろすと、岩泉は慌ててごめんとあやまった。

「いーよ、あとで洗うもん」
「でも、おばさんとかにばれたら、」
「うち放任なの、岩ちゃんが一番知ってるじゃん」

それに、ちゅーしてくれてうれしかった。及川がいうと岩泉は目をそらして、べつに、といった。照れているときの岩泉は、いつだってこうだった。ふふと笑って抱きつくと、「やりたくなるからダメ」と引っぺがされる。やっぱりクソくらえだ。終わったら好きなだけやってやる。

ひとり決意しながらごろんとふとんに転がると、制服の皺を手で直していた岩泉はふと、「お前、見合いの話がきてるんだって」といった。なんだそれはなんのはなしだ、思ってからああそういえばと思い出す。

「あんなの、親が勝手に言ってるだけだよ」
「そうなのか?」
「そうだよ」

じっさいのところ、そうだ。及川の家は地元でもユウスウのメイカというやつだから、そういう肩書の好きな輩にとっては格好の獲物かなにかにでも見えているらしい。及川が高校も三年に上がるとそういった引き合いがいくつもくるから断っていたが、田舎の噂というのはめんどうなものだ。岩ちゃんの耳にも入るなんて、と及川は憤慨する。

「だいたい俺、岩ちゃん以外と結婚するつもりないし」
「いや、ないしっつってもさあ……」
「だって、岩ちゃんだって『俺にしかやらせねー』なんでしょ」
「! ……おい、盗み聞きとか趣味わりぃぞクソ川」
「えへ、嬉しかったな〜」

にやにや笑うと頬をつねられる。いつもどおり容赦のない手にいひゃひゃ、いひゃいよと抗議しながら、それでも及川は嬉しかった。

「俺、高校出たら岩ちゃんとおんなじ大学行ってついでに同棲して、岩ちゃんが大学出るころ出来ちゃった婚する予定なんだ」
「予定って、」

俺に言うなよと岩泉はいったが、それでもだめとは口にしなかった。岩ちゃんはやっぱりやさしいと思った。





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女体化は普段よむ専なんだけど及川が女子なのすごいもえるから思わずかいた。多分もうかかないけど楽しかった。ねる
(2013.0405)